北陸大学教職員組合ニュース193号(2003.7.2発行)

 

賞与:法人側3か月分の人事考課案を2か月分に変更

I. 平成15年度第1回団体交渉(616日)

4月から申し入れていた平成15年度の第1回団体交渉が6月16日に行われました。

314日の団交以来3か月ぶりでした。平成14年度の賞与交渉が未決であることもあり、この間組合執行部は何度も団交を持つことを要求しましたが、この日まで法人側は団交を持とうとしませんでした。

 

(1)平成14年度賞与交渉

1回団交では、まず、平成14年度の賞与に関する話し合いが行われました。組合ニュースでもすでにお知らせしましたように、平成14年度の賞与支給は、3億円もの差額が生じた予算見積りに基づいて行われました。団交では、最終的な減収の状況に応じて賞与の妥結をするということで合意があり、予想減収額が3億円も少なかったにもかかわらず、法人側は当初の提案を一切変更しませんでした。つまり、法人は誤った予測に基づいて決定した賞与の支給額を誤りが判明した後にも訂正しようとしなかったのです。組合としては、すでに次年度の半ばということもあり、平成14年度の賞与交渉についてはこれで打ち切るが、平成15年度の賞与に3億円の余剰分を反映させるよう要求しました。

 

(2)平成14年度入試手当について

 次に、「入学者選抜に係る特別賞与」(いわゆる「入試手当て」)について話し合いが行われました。入試手当は、かつて組合と法人とで協議が行われ、平成7年度以降は締結された合意文書に基づき、支給されてきましたが、平成14年度に、法人はこれを一方的に反故にし、年度末の特別手当の名目で支給を強行しました。

組合が支給額の算出根拠を文書で提示するよう昨年度初め以来求めていたにもかかわらず、法人側はここに至っても文書を提示せず口頭での説明に終始し、支給は、20万円、15万円、10万円、5万円、3万円の5段階で行われたことしか明らかにしませんでした。組合はあらためて、支給額の算出根拠を文書で提示するよう求め、法人側からは「アドミッションセンター長、学長と検討の上示す」旨の回答がありました。

 

(3)夏季特別休暇及び年末年始休暇について

 次に、平成15年度の夏休みの特別休暇及び年末年始休暇について議論がありました。夏休みの特別休暇は3日間に加えて2日間の有給休暇を取らせる、年末年始は1229日から13日という法人案に対して、組合側はすでに510日の段階で法人に、特別休暇は5日間にして、有給休暇を取らなくても済むようにし、年末年始はもう1日増やして14日までを休みとするよう訂正案を出し、昨年度大幅に短縮された特別休暇を一昨年以前のレベルに近づけるよう申し入れてありましたが、法人側は聞く耳を持たず、当初の案から一歩も譲りませんでした。示された主な根拠は、夏休みについては有給休暇の消化率が悪いということ、年末年始については、金沢大学などがそうしているということだけでした。

 

(4)労働法違反の組織運営に抗議

 次に、組合は、先日、その存在が発表された「薬学部刷新準備委員会規程」及び「新学部設置準備委員会規程」が教員の「身分の得喪」までも扱うことになっていることに抗議の意を表明し、法の遵守を強く申し入れました。

 

 団交の最後のところで、平成15年度の賞与に関して、松村労務担当理事から627日の支給を予定しているという発表がありました。支給額の提案も示されず、賞与交渉の資料も一切示されませんでしたので、資料開示の要求と早急に支給の提案内容を明らかにするよう求めて第1回の団交は終了しました。

 

II. 臨時組合大会報告

 619日(木)に法人から三役に対して、平成15年度賞与について提案がなされ(別紙資料1参照)、それに基づいて623日に組合大会で討議がなされました。大会ではまず、上記の件について報告、質疑応答がなされた後、今年度の賞与に関して活発な議論が展開されました。特に、批判が集中したのは、夏、冬の賞与の額が2か月を大きく割り込んでいることでした。「これでは住宅ローンの支払いができない」という声には多くの賛同がありました。法人側が、交渉の根拠となる数字を明示しておらず、組合が賞与の全体に対して明快な提案を出すことは無理なので、大会では、夏季賞与に焦点を絞り、昨年並みの一律2か月分を要求することが採択されました。

また、人事考課については、昨年度は1か月分の幅で行われたことに対してすら批判が多かったのに、それを3か月の幅で行うという法人案は常軌を逸しているという批判が多くありました。また、入試手当てを、人事考課の一部とすることにも疑問が呈されました。学部間格差に関しても容認はできない旨、確認されました。

 

III. 平成15年度第2回団体交渉(624日)

組合大会での議論を踏まえて、624日(火)に第2回目の団体交渉が行われました。最初に、なぜ法人側が平均4.5か月の賞与を提案したのかを質しました。説明によれば、昨年度の平均は4.3か月であった、また、「入学者選抜に係る特別賞与」は平均が0.2か月であった、今年は両者を一つにして支給するので、合計4.5となった、ということでした。教育職員の人事考課3か月分は平均で1.5か月とする方針なので、そこから夏季、年末賞与が決まり、薬学部は1.61.6、それ以外は1.41.4と決定したとの説明です。これに対して、組合は大会での意見を紹介し、また、昨年度賞与の補填も当然配慮すべきなので、夏季賞与については一律2.0か月分を支給し、年末賞与などについてはあらためて交渉することを主張しました。

人事考課については、なぜ3か月もの幅でやるのか質したところ「世間並みのことをなぜやってはいけないのか」との返事があったので、他大学の人事考課の資料を出すように求めたところ、具体例は何一つ示されず、結局「大学の方針だから」という「説明」しかありませんでした。昨年度の人事考課により、目立った効果はあったのか、活性化はあったのか、との質問には、最後まで明確な返答はありませんでした。はっきりした効果も出ていない、しかも多数の教員が反対しているのに、なぜ、賞与全体のほぼ半分にもあたる3か月の幅で人事考課をやるのか、とあらためて問うと再び「大学の方針だから」ということでした。また、一般職員の人事考課についても、人事考課の結果、どのような効果があったのかについて、まったく納得のいく説明はありませんでした。

 結局、法人側から一切歩み寄りの姿勢は見られず、第2回団交は時間切れとなり、翌日あらためて話し合いをすることとなりました。

 なお、入学者選抜に係る特別賞与については、以下のような表が示され、アドミッションセンター長、学長が、050点の範囲で点数の追加を行えるようになっていたが実際には数点の追加にとどまったとの説明がありました。

 

点数

5点未満

〜25未満

〜50未満

50以上

問題責任者

金額

3万円

5万円

10万円

15万円

20万円

人数構成

22%

26%

18%

32%

3%

 

IV. 平成15年度第3回団体交渉(625日)

625日に第3回目の団体交渉が行われました。席上、法人側から修正案が出されました。人事考課による幅を3か月から2か月に減らし、その減らした分を一律支給に上乗せしたいというものでした。そうして、薬学部の場合は、夏季賞与を1.6か月分から1.8か月分に、年末賞与を1.6か月から1.9か月分に、年度末の人事考課分を平均1.5か月分から1か月分に、薬学部以外は、夏季賞与を1.4か月分から1.6か月分に、年末賞与を1.4か月分から1.7か月分に、年度末の人事考課分を平均1.5か月から1か月分に変更するという提案です。つまり、一律分が0.5か月分上乗せされて配分されるというわけです(後から配付された別紙資料2参照)。

組合はこれに対して、1)人事考課を3か月分から2か月分に減らしたことは評価できるが、現状を考えれば2か月でも大きすぎて同意できない、2)賞与支給額の全体を増やしたわけではないので、年間賞与については今後の交渉事項となる、3)夏季賞与は一律2.0か月という要求は、組合大会の決定でもあり、安易に引き下げるわけにはいかないということを主張しました。

しかし、法人側は、現時点では変更案をさらに変えることはまったく検討の余地がないとし、627日金曜日での夏季賞与支給に執着しました。組合としては、交渉の流れ全体を考慮し、今後財政開示も含め、資料を提示して、誠実に交渉を続けるという条件付きで、仮払いに同意することとしました。

 

 今回の団交では、法人側が最初の提案(別紙資料1)を変更し、譲歩したかのように見えますが、実は、人事考課の幅を減らしただけであって、賞与の支給額全体を増やしたわけではありません(別紙資料2)。別紙資料3にあるように、最近の賞与額の推移には異常なものがあります。2年連続で0.7か月ずつの大幅な減額です。賞与については、特に二つのことが問題です。

 第1に、本学の財政の現状――もちろん、明らかにされている範囲でです――から判断して年間賞与があまりにも低すぎます。昨年度の年間賞与は、総額で5億円の減収見込みを前提に、平均4.3ヶ月とすることが提案され、実施されましたが、実際の減収は2億円でした(組合ニュース第190号、20034月7日発行)。「3億円」の差額は、当然賞与に反映されるべきです。また、法人は、「人件費が帰属収入の45%を超えないことを原則とする方針」を団交で明言しています(これは経営側の方針で、組合には別の水準の考えがありますが、いずれにせよガラス張りの経理公開なしでは、実りある議論になりません)。昨年度の経理公開は行われていませんが、団交の席上、人件費は約41%であったことが法人側より口頭で伝えられました。つまり、4%、2億円を超えるゆとりがありながら、昨年度は大幅な賞与の削減を行ったのです。

 第2に、譲歩したかのように見える人事考課の幅2か月は、学部間格差同様、まったく受け入れられるものではありません。法人側の説明では平均の支給を1か月分としたいとのことでした。昨年強行した教員の人事考課の賞与への反映は1か月分(平均支給0.3か月)でしたが、それと比較して幅を2倍にしようとするものですが、実は、支給額の平均で言えば、0.3か月から1か月分へと3倍以上に拡大されるものです。事情は事務職員も同様です。

 法人側が、これまでの態度を改め、一方的な押し付けをやめないかぎり、大学の活性化への道は閉ざされ、大学は衰退の一途をたどることは目に見えています。

 組合へのさらなるご支援をお願いいたします。

 

 

団交資料



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 



組合に組合員からの投稿がありましたのでご紹介します。

 

5年後,10年後の薬学部はどうなっているでしょうか?

 

新学部・学科構想,薬学部刷新構想,法科大学院構想についての概要が,624日発行のWith No3 に報じられた.薬学部では,既に,527日(火),前日の理事会での決定事項として,学長から薬学部の定員増と「薬学部刷新準備委員会」規程(配布)について説明・報告された.この準備委員会の役割と規程の問題点については,既に,組合ニュース第192号(611日)で論じられたが,ここでは大幅定員増の薬学部の将来に関して,率直な感想を述べたい.

 

学長報告の席上でも,学生数増加による病院実習実施の困難,外部機関への在学生実習依頼への悪影響,学生の質と国家試験合格率の低下について,複数の教員からその懸念が直ちに表明された.薬学部教員が本薬学部の存続に危惧の念を抱くのは当然で,この懸念は日増しに増大するとともに,何ともやりきれない無力感,絶望感に変ってくる.しかし先ず何よりも,これほど重大な薬学教育の根幹に関わる方針変更が,教授会で一切審議されることなく,トップダウン方式で理事会の決定事項として報告された事実が,本大学の危機そのものであることを指摘したい.法学部をもつ大学でありながら,およそ民主主義とは全く相容れない組織運営が顕在化して久しい.大学のこの体質は,少子化,不況,新設大学など,外的要因による環境の厳しさよりも,遥かに深刻な内部危機をもたらしている.累積した悪しき実績に合わせて,最近,教授会を学長の諮問機関とするとの規程改変は,この体質に辻褄合わせしたものである.およそ教育者とは程遠い権力者が教育の現場を土足で闊歩している本学の現状は,正に非常事態である.

 

さて,With No3冒頭に, “本学は教育の充実を第一の目的としています.その目的は「学生にとって最善であるかどうか」を常に問い,地道な努力と実行を重ねる中で実現されます.” とある.異論はない.

続いて,薬学部刷新構想の内容は, “学部新設が相次ぐ競争激化の中で,量的拡大をもって,質的発展・向上を図る構想” となっている.定員460名への増加をもって,質的発展と向上があり得るのか? 既に,薬学部教授会(612日)席上で,予想1学年数560名として,云々,の副学長発言もあった. 教員の一人として,これは正気沙汰ではない,と思った.薬学教育の最低限の成果である国家試験合格率,それは本学にとっては死活の指標であるが,近い将来回復不能な決定的凋落が待っているのみと懸念される.この北陸大学薬学部では,量的拡大そのものがもたらす本質的な変化は,個々の教員の力の限界を超えた,次元を異にしたものとして,大学の存続を揺るがすであろう.増員構想は,“教育の充実を目的とし,そこに学ぶ学生にとって何が最善であるか” を問い,決められたとは思えない.そうではなく,教育を手段とする立場の構想でしかない.教育者に自明な判断が,非教育者の経済的価値観によって無視され,踏みにじられ,教育現場を縛ることが,悲劇であり,災難である.

この薬学部刷新構想の目的,そしてその結果,薬学部の辿るべき道筋が誰にも分かり切っている.美味しい目的だけを手中に収め,負の遺産は現場に押しつける意図,だからこそ,構想の内容を議論させず,教育成果,個人の結果責任のみを強調して,責任転嫁の準備には,万端怠りがないのである.責任転嫁については,外・法学部の現状をみれば明らかである.いったい誰が法学部をつくり,誰が潰したか,そしてだれが責任をとっているのか,被害は誰が受けるのか,しっかりと注目していきたい.

本学薬学部は私学として不可避のマスプロ教育を実施してきた.それでも何とか維持している80%前後の薬剤師国家試験合格率は,真面目な学生の努力と現場教職員の日々の取り組みと,長い年月をかけて築き上げた教育体制があるからである.改革は常に必要である.しかしながら,責任感も道徳感も欠落した,教育を論ずる資格も品格もない者によって,大学創設以来築き上げてきた我々の伝統と財産を破壊させてはならない.

 

With No3の裏面には,第88回薬剤師国家試験結果が記載されている.合格率は,私学29大学中22位(新卒では24位)で,演習担当者のひとりとして,今回も私学の平均まで到達できなかったことを残念に思うが,一方で,このハードルにかすりながらも超えることのできた学生達の笑顔に,ほっとしたばかりでもある.本学は合格ライン付近の学生層が多い.学生達の必死の努力と,この学生層を1点でも2点でも持ち上げたいとの教員の懸命な尽力で,何とか現状の成果を維持していると言える.ゆとりはない.“目標である90%の合格率には程遠く− − −”等の,現場を知らない感想と空々しい説教調の文章に興味はないが, “薬学部刷新準備委員会による改革の具体策に沿って時代のニーズに応える薬学部へと発展” したとき,いや,とりあえず,来年度入学生が卒業時の5年後の国家試験合格率,そして6年目から10年目までの合格率推移はいったいどうなるのか? 刷新準備委員会委員長には,是非とも目標数値を示していただきたいものである.