北陸大学教職員組合ニュース241号(2007.3.1発行)



この現実、あなたは怒りますか?悲しみますか?

2教員、ついに不当解雇 −



 平成19221日、北陸大学法人は、2名の教員に対し開学以来初の整理解雇を通知しました。「就業規則第21条第7号・第9号に基づき、平成19331日付けにて解雇することといたしたく、本書をもってご通知申し上げます。」学校法人北陸大学理事長北元喜朗という通知人名が記された、文字通り一片の紙切れです。この紙切れをもって、2名の教員はそれぞれ二十有余年十有余年の教職活動を大学により否定されました。

 適用された就業規則第21条第7項は「規模の縮小等の事由により、勤務を必要としなくなったとき」、第9号は「前各号に準ずるやむを得ない事情があるとき」となっています。これは整理解雇を意味します。しかし、今回の整理解雇は、恣意的な不当解雇以外の何ものでもありません。労使慣例上も道義上もまったく根拠を欠くからです。

 教職員組合が結成されてから12年、組合は大学の民主化と正常化を求めてきました。ある意味で組合の生い立ちは不幸であり、現今の労組結成としては特殊です。開学20年にして北陸大学はそのことが必要な状態に陥ったのでした。それゆえに、大学の在り方に向けられた希求が、経済的要求よりも優先し、教職員の多大な支持を得てきました。シンボル的活動の一つに、教員の8割が支持した学長・学部長「公選制」要求運動の支援があります。これは、教学の主体性を確立するための運動でした。単純な理由です。教員組織が、そして教員の一人一人が主体性をもたなくて、どうして人を教育できるでしょうか?時には激しい運動があり、また、当時の文部省の行政指導があり、やがて理事会と教員組織の「協働関係の確立」が合意されました。形としては学長・学部長の選挙制度の採用です。しかし、この制度はもろくも崩れました。それとともに「協働関係」も教学の主体性も崩壊しました。最大の理由は、理事会だけは刷新されなかったからです。現在進行している薬学部における教員排除、旧外・法学部の教員解雇で排除・解雇されようとしている教員は、このような民主化・正常化の活動に深く関わってきた人たちです。

 今回の解雇に繋がる整理解雇発言は、早くも平成15829日の団交の際にありました(「教職員組合ニュース」197号)。そのときから、大学法人は回避努力を一切拒否する姿勢を貫いてきました。それだけでも今回の整理解雇は不当なものです。一般に整理解雇するためには4つの要件が必要です。 1. 人員整理の必要、2. 解雇回避努力義務の履行、3. 被解雇者選定の合理性、4. 手続きの妥当性、です。今回の整理解雇はこの要件をどれ一つ充たしていません。経過の全体を通して理事会側の対応は極めて不誠実でした。団体交渉では、理事会側は「担当科目がなくなるから雇用関係が終了する」と言うのみで、整理解雇であることを今年の1月まで明確にせず、このため、解雇回避するための協議がまったくできませんでした。加えて被解雇者選定についても、理事会は未来創造学部のカリキュラムに担当する科目がないことを解雇の理由として選定責任を回避し、一方、教育上の責任者である学長は「人のことは考えずにカリキュラムを作った」と言明しています。それでは、いったい誰が責任を持って解雇を決定したというのでしょうか?明確な理由、明確な責任の所在なしに人は解雇されるわけにはいきません。

 法人理事会の解雇方法には一つのパターンがあります。先ず、担当授業科目を奪い、それから、担当科目がないことを理由に解雇するというやり方です。学長・学部長の選挙制度崩壊後、教学機関は主体性を失っただけでなく、このパターンの中の役割も負わされているかのようです。今回の解雇では学長・副学長・学長補佐そして学部長、彼らの下にある教授会、各種委員会等、それらのすべてが機関として特定の教員を排除するために動員されたように見えます。平成18年度第2回団交で理事会側は、今回の解雇問題は経済的理由よりも「教育上の問題」と発言しているからです。しかし、今排除されている教員たちは、もちろん民主化・正常化運動以上に、生涯をかけて教育に献身してきました。長年協力し合ってきた同僚教員が彼らの職まで奪うことを考えるはずがありません。理事会は、「新学部設置準備委員会」に中川専務理事以下を参加させることによって、発端のカリキュラム作成に深く関わっています。「解雇通知書」には、「ご担当いただく科目がないことが確定いたしております」と、他人事のように理由が記されていますが、理事会は自らが意図して作った状況を「教育上の問題」と言い逃れすることは許されません。

 北陸大学はどこへ行くのでしょうか?近年、信じられないくらい多くの教職員が大学を去りました。特に太陽が丘キャンパスの教員は、停年や派遣教員交代等の事由を除いても、平成15年度以降の3年間だけで25人が退職し、未来創造学部に至っては、スタート時24名の教員中、約半数の11名が去っています。こんな大学が他にあるでしょうか?入学志願者状況に関しても、外・法学部の募集停止は定員を充足しなくなったことが最大の理由でしたが、未来創造学部は日本人学生に限ればそれよりはるかに低い充足率になっています。薬学部の志願状況もここへ来て極端に悪化してきました。しかし、法人理事会は自らの失敗を認めようとしていません。それどころか、一方で募集の大号令をかけながら、一方で解雇問題を法廷事件にする道を選びました。それほどまでに教職員組合を嫌悪する理由は何なのでしょうか?排除された人間に、今後家族とともに苦しい人生を強いることを承知の上での選択です。非人間的選択です。

 あなたは、この現実を怒りますか?悲しみますか?

 この現実は当事者だけに突きつけられた現実ではありません。教職員組合は、あなたのご支援を待っています。