北陸大学教職員組合ニュース265(2008.1.17発行)


中労委で6年制薬学部及び大学院担当を認める和解合意

石川県労委救済命令の方向に沿う勝利


 年明けの111日、中労委で3回目の調査・審問が行われた。調査は、午前10時に開始され、昼食を挟んで午後2時までに当事者双方が中労委の和解勧告案に原則合意した。和解勧告案は5項目からなるが、佐倉、荒川の2教員を6年制薬学部及び大学院担当とし、田端教員を6年制薬学部兼担とする、また大学院については今春4月から担当とする、という組合の要求の大原則が認められた。教職員組合が譲歩した部分もあるが、このことは、実質大きな勝利に値する。和解条件の細部については、問題が残らないように1月末日までに中労委が責任を持って仲介・調整することを確認し、双方は212日にこの和解勧告案に調印することで合意した。和解合意については公式の確認書が作成され、双方の代理人が署名押印した。

 この日の審問は、冒頭に審査委員長から、午前中に和解協議を内容とする調査を行い、午後に審問(証人尋問)に入りたい、との予定が示された。組合側はこれ以上の引き延ばしを避けるため、同日中に予定通り審問(証人尋問)を終えることを強く要望した上で、調査予定に同意した。調査は組合側に対する意見聴取から始まった。既報(「組合ニュース」前号のように、昨年末近くに審査委員長から和解案の提示があり、それに対し、組合は譲歩できる線を明確にして回答していた。中労委はそれを踏まえて理事会に打診していたが、委員長から、審問前日に理事会の回答が提出された、との報告があり、それらに基づいて急遽作成したという「和解骨子案」が組合に提示された。骨子案の段階では4項目であったが、内容は概ね104日に提示された中労委和解案に沿ったものであった。組合側はいくつかの点で明確な表現を要望し、理事会側の回答を待った。これまでの経緯から、この「和解案骨子」を理事会が受け入れることは予想しにくいところであったが、理事会側はこの案をほぼ全面的に受け入れた。その結果、午後早い段階で中労委和解案が合意に至った。合意された和解勧告案は、正式な和解調印前なので、まだ詳細は報告できないが、第1条項のみ概略を示したい。

この条項は、これまでの「長期にわたる労使紛争の経緯」を踏まえ、中労委において和解したことを確認し、今後「大学の健全な発展及び労働基本権の尊重を旨とし、信頼と理解を深め」、労使間の諸問題について「平和裡に解決を図る」ことに努める、というものであり、一見形式的前置きのようにも見えるが、いわゆる 「前文」 に相当し、和解文全体の基本精神と枠組みを示している。この「前文」の重要な意味は、中労委が石川県労委の判断どおり、「長期にわたる労使紛争」の存在を認定し、「労働基本権の尊重」という原則を要請したところにある。「信頼と理解」、「大学の健全な発展」、労使問題の「平和裡の解決」

が説かれているが、それらは教職員組合が常に望んできたことであり、それらが無視されてきたからこそ、労働委員会への提訴となったのであった。我々は和解事項の履行にあたって、ここに盛られた基本精神が十分に生かされることを願いたい。


真の和解への期待


 今回の3教員担当外し事件では、理事会は石川県労委段階からさまざまな担当外しの理由を後付けして不当労働行為を否定した。今回の和解勧告案は、石川県労委が認定した不当労働行為には直接的表現では触れていないが、「長期にわたる労使紛争」の存在の認定や、「労働基本権の尊重」 の揚言など、主要な点で石川県労委の命令・判断が前提されたものであった。組合としては、中労委においても不当労働行為に関して明快な命令・判断を求めたい気持ちは強い。 しかし、当事者本人の将来、及び大学の将来を考えることも、また 組合結成の原点に帰結する。正面きって不当労働行為の言及こそ無いにしても、組合の立場としては、不合理な組合員外しという間違いを正すことが最重要事項であり、今回はその意味で実質大きな勝利であった。 組合は、このような是正の事実の積み重ねによって、この種の事件の再発は防止されると確信する。私立大学を取り巻く状況を考えると、理事会の態度によっては、さらに大規模な事件も生じかねないが、 組合は、もう一つの訴訟事件、2組合員の不当解雇事件に勝利することで理事会の理不尽な暴走を阻止したい。 幸い金沢地裁の仮処分決定は2教員の主張を全面的に認めるものであった。今回の勝利の和解は、この裁判にも大きな影響を与えると思われるが、 我々は 「大学の健全な発展」 のために今後とも社会の良識に希望を持ちたい。

 ところで、102日からの経過を振り返ると、その日にいったん和解が合意しかけたものの、理事会はそれに基づいて104日に出された中労委の和解案を11月から12月にかけて後退させ、頑なな態度に戻った。 ところが、今回の和解協議では、再びほぼ102日の線に転じた。 なぜ、この変化が生じたかは定かでない。 ともかく、今回の和解が本当の解決になるかどうかはひとえに理事会の態度にかかっている。今年の新年祝賀会における理事長挨拶のキーワードの一つは「変わる」であったが、 教職員に変わることを強制するだけでなく、理事会自身が変わることが求められる。私大を取り巻く厳しい状況の下で、理事会が今回の和解の精神に立ち返り、明日の北陸大のために、虚心に他者に耳を傾けることを期待したい。


 薬学部担当外し事件が中労委に移ってから、中労委審査委員長の和解に対する熱意は目覚しかった。今回の和解は審査委員長の信念に基づく粘り強い努力の賜物と言える。とりわけ、 今春4月からの大学院担当に関しては、 かねがね審査委員長が、あと1年を残すだけになった佐倉教授の最後の1年を、教授らしく学生を指導することで全うさせたいと、最も気を配った節があった。 いろいろな思いはあるが、我々は謙虚に感謝したい。 また、今回 「勝利和解」 に至ったのは、弁護団と私大教連の県労委段階以来の適切な弁護方針と労苦を厭わない取り組みのおかげであった。言葉では言い尽くせない感謝の意を表したい。

 今回の審問には約20名の私大教連役員及び東京都私大教連加盟の教職員組合役員が応援参加してくれた。力強い限りであった。同様に感謝したい。