北陸大学教職員組合ニュース276(2008.11.18発行


賞与は賃金である。

200872日の第3回団交で、理事会は、夏季賞与について、「成果が出ていないので、賞としての賞与は出せない」、その上で「“特例措置”として昨年の20%減額で支給する」と通告した。団交に前後して、学長は両キャンパスの全教員に「教育目標達成のための特例措置について」説明した。教職員組合は、団交で、この支給が夏季“賞与”の暫定支給であることを理事会に認めさせ(組合ニュース274号)、賞与は「生活給」であると主張した。

理事会の言う成果とは、入学定員確保および薬剤師国家試験とTOFEL 等の語学検定試験の合格率の目標達成である。理事会は、最近の3年余、教職員に対して意識改革と大学への貢献を求めると共に、賞与について、「特段の功績・貢献に対して称える『賞』として位置づけるもの」(平成1812月)、「特段の成果が目に見える形で実現された時の『報奨』」(平成1912月)、「時期がくれば当然に支給されるものではなく、権利でもなく」(同)などと、賞与廃止を実現するためのキャンペーンを展開してきた。上記はその延長線上の「賞与なし」の宣言であったが、以下、理事会の主張の不当性を糾弾する。


住宅ローン等の返済プランを例に挙げるまでもなく、賞与は「生活給」であることは、教職員の、世間の、変わらぬ認識である。組合は一貫してこの立場をとっており、成果達成を理由とした賞与月数の切り下げにも、賞与の廃止にも同意したことはない。労働基準法では


 第11条 賃金とは、賃金、給料、手当て、賞与その他の名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。


と定義されている。賞与は疑いもなく賃金の一部だ。また、同法では、


 第2条@ 労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。


と定めており、給与・賞与は労働条件の重要な要素であるので、いずれも、理事会は組合との交渉によって決すべき義務があるのである。一方的に決定されるべきものではない。賞与を一方的に廃止することなどできることではないのである。なお、理事会は「特例措置による支給であって賞与ではない」としたが、如何なる名称を使おうが、特例措置が賃金であることに法的に変わりはない。


理事会が定めた「学校法人北陸大学の規程」を無視

 そもそも“賞としての賞与”たるものは、学校法人北陸大学の規程に存在しない。確かに、理事会は平成16年頃から賞与の廃止を目論んだ。しかし、改訂しようとした就業規則と給与の改訂案は、組合が断固反対した結果、法的な手続きが未了で、金沢労働基準監督署に届けられないまま、発効していないのである。その事情は組合ニュース第259号に詳しい。「賞与の支給」について、現行就業規則には次のように定められている。


 第67条 学校法人北陸大学の業績を勘案し、理事長が可能と認めたときは、賞与を支給することができる。


 ここで、賞与の支給にあたって理事会が勘案すべきことは「学校法人北陸大学の業績」である。この意味は、個々の教職員の業績とか、理事会が方針として決定した教育成果(目標合格率の達成)などに限定したものではなく、もっと広義に「経営状態から判断して、可能ならば支給する」と解釈するのが妥当であろう。現状では、後半の“理事長が可能と認めたときは”のみが切り離されて強調されているのではなかろうか。

「賞与の支給時期」について、学校法人北陸大学給与規程は次のように定めている。


 第25条 3 賞与は、原則として夏季と年末に分けて支給することができる。


支給の根拠も時期も、大学の規定で明示されているのだ(3月支給も4月支給も規程上はあり得ない)。組合の立場で言えば、給与交渉、賞与交渉に臨んで「経営状態を示す財務資料の提出」を要求し、「夏季と年末」を前提にして賞与交渉を要求することは、労働法上も、本学の規程上も、当然のことである。「時期がくれば当然に支給されるものではなく、権利でもなく」の理事会の主張に理はない。このような身勝手な主張を断固排除しなければならない。


理事会の「賞与は支給できない」の不当性

「十分な成果がない中、賞与は支給できない」(平成2074日、特例措置の添付文書)との理事会の主張、宣言は、教職員の待遇を劣悪化させ、その施策を追認させようとするキャンペーンであるが、矛盾に満ちた不当なものである。

第一に、理事会は「学校法人北陸大学の業績」を「教育成果、志願者確保」と意図的にすり替えている(教職員個々の成果を問おうとしている観さえある)。上述の通り、理事会が自ら決めた就業規程を捻じ曲げて、独断的なご都合主義の解釈である。

第二に、仮に定員充足などを「大学の業績」の一部に考慮すると言うのであれば、2004年と2005年の両年度に薬学部へ520余名を入学させた際に賞与を上げたのか、と問いたい。昨年2007年度の薬学部は、1,800人を越える学生が在籍し、30余年の歴史で最多、経営上は最大の収入があった。が、昨年の年間賞与支給は0.4ヶ月の減額であった。

第三に、仮に教育成果(各種目標合格率)を「大学の業績」の一部に考慮するとしても、合格率が低い要因は何か、と問いたい。第93回薬剤師国家試験(20083月)が64%となったが、1年前、4年制の学生に「何よりも国家試験受験の“機会”を与えることを最優先せよ」というのが理事会の方針ではなかったか。加えて、その受験生は520余名入学の学年ではないか。教員を増やすことなく、私学でトップクラスの過重な教育負担を教員に強いたのは理事会の方針だ。「日本私立薬科大学協会だより」第70号(平成1911月)によれば、本学薬学部1教員当りの学生数は23.1名、私立薬科系50大学の平均(16未満)よりも遥かに多く、負担は5割増でワーストグループに入る(それでも学長は「教育はできる、教員が多すぎる」と発言している:20081010日教員懇談会、組合ニュース前号)。

第四に、経営状態から言えば「学校法人北陸大学の業績」は挙がっている。財政は豊かである。私学上位の高額学納金とワーストの人件費。組合による財務資料の公開要求には、頑なに拒絶の姿勢を変えないが、豊かであることを理事会は随所で認めている(組合ニュース第274号)。その豊かさは教職員の犠牲によって増幅されたのであり、教職員への賞与・給与を改善するに十分な厚みがあるのである。


教職員の賃金をまともに支払え!

 今年ももうすぐ年末賞与の時期である。多くの教員にとって、賞与ゼロでは住宅ローンも、子女の学費も払えず、教育ローンも返済できない。年毎の賞与削減に加えて、ベースアップはなく、とりわけ6年前から、年齢給と職能給から構成される給与のうち、職能給が凍結され、年齢給だけが加齢に伴ってわずかに上げられる有様。その額は年齢によって異なるが、0円から数千円である。しかもその年齢給でさえ放置され、組合に「上がっていない」と指摘されてようやく是正された年もあった。年収の低下が凄まじい。待遇改悪が進んだ結果、特に若年層の水準が極めて低くなり、流石にその層のみの改訂を、当事者に箝口令を敷いた上で、余儀なくされるという事態(2006年)に陥ったほどである。若年層に限らず、既に本学教職員の大半は、生きる為の出費で精一杯、自己投資のための教養費などはどこぞの人の話かと思うのみだろう。大学教職員としての体面を保つどころか、貧が鈍を招き寄せようとしている。限界なのである。

既報のごとく、理事会は「新給与体系の改定案を検討中で、今年は提示したい」と毎年、毎回の団交で、エンドレステープのように同じ発言を6年間も繰り返している。良識を持たない理事会の職務怠慢と言うよりも、明白な組合憎悪に基づく不当労働行為・誠実交渉義務違反である。組合は現在2名の教授の解雇裁判で、その不当労働行為・誠実交渉義務違反に対して原告として闘っている。法廷における糾弾と解決も急がれるが、組合は教職員の経済的な逼迫状況の即時解消が必要との認識で団交に臨み、夏季賞与が暫定支給であったことを踏まえた年末賞与を勝ち取りたい。後掲の通り、団交の開催を申し入れている。

繰り返すが、「賞与の廃止」は何の正当な根拠もなく、理事会が一方的に強行した不当な行為である。本学教職員の生活を維持することは理事会の責務である。賞与ゼロでは、理事会自らの体面も保つことはできず、それは世間をして、本学の将来に危惧を抱かせる要因となると警鐘を鳴らしておきたい。



団交は1119日(水)18:00〜に予定されています(薬:101P)。

賞与、薬局出向などが議題になる予定です。何方でも参加できます。