北陸大学教職員組合ニュース第54号(1997.2.17発行)

 法人役員の退職金規程と功労年金贈呈規程について

          本学の規程の在り方を問う

 

 約3億円という桁外れの高額な退職金が、どうして北元喜雄前理事長に支払うことができたのか? その「からくり」が分かりました。学校法人の「常勤役員退職金規程」と「功労年金贈呈規程」を平成5年12月の第100回理事会で、それもこの二つを同時に決めて、「高額退職金」を合法的に支給する下準備が事前に行われていたのです。両現程とも未だに教職員には配布されていませんので、それらの概略を紹介します。本学の諸規定の在り方をも併せて考えてみてください。

 

1. 常勤役員退職金規程について

 理事長の退職金に限定して説明しますと、従来規程では「職員と同じ退職手当支給規程(別表も)を準用し、その1.5倍の額」とし、「創設功労年金の贈呈者(北元喜雄氏はこれに該当している)には退職功労金は支給しない」となっていました。したがって、月給230万円(堆定)で在任20年として計算すると、約9000万円です。

  退職金  230万円 x 1.5 x 26.3 = 9074万

  功労金 支給されず                     

 それが、新規程では「退任時報酬月額の2倍を基準額とし、役員用の別表により支給」し、さらに「退職功労金を支給できることにして、金額は理事長が決定する」に変更されました。この新規程で計算しますと、次のように退職金は倍増し、功労金を付加すれば、3億円とはいわずいくらでも支給できることになります。

  退職金  230万円 x 2 x 37.2 = 1億7112万円

  功労金  理事長の専決により無制限に支給できる。

 なお、別表の係数については、20年の場合従来の26.3から、役員は37.2と5割近くも増やしたのに対し、職員については26.3に減らされました。したがって、我々の退職金は逆に減らされたのです。(ちなみに、定年退職時に月額65万円の20年在職の教職員の場合には、その退職金は65x23.6で、わずか1534万円です。)

 さらに、北元喜雄氏には「高額の終身年金(月額230万円以上と推定)」も支払われています。

 

2. 役員功労年金贈呈規程について

 

 新たに制定された「法人役員功労年金贈呈規程」なるものの内容の重要な部分をつぎに紹介します。

 法人の要職にあって顕著な貢献を挙げた人に対する終身功労年金制度であり、「功労者の要件」としては、次の一つに該当していればよいとされ、法人以外のたとえば大学にいくら貢献してもこの要件には該当しないようです。

  1 法人設立時、設立準備委員であったこと。

  2 退任または退職時、法人の常勤役員として勤続10年以上であること。

  3 学長として勤続6年以上であること。

  4 設立認可以来、法人の要職にあること。

  5 前各号に準ずる功労のあった者であること。

 この年金は「終身年金」であり、しかも本人が死亡した場合は、配偶者に2分の1の額をやはり終身支給されます。

 年金贈呈者は、理事長が理事会の議を経て決定するとなっていますが、「その年金額は理事長が独断で決める」ことができるようになっています。

 「前理事長北元喜雄氏」には、退職時の月額を支給される創設功労年金制度ではなく、この新しい規程で年金が受給されているとのことですので(団交での回答)、おそらく、退職時の給与を下回らない額の年金を受けていると思われます。したがって、この規程で支給される終身功労年金の額は一般にかなり高額であると予想されます。

 

3.解説          

 

 いまさら解説するまでもないとは思いますが、このようにして法外な高額の退職金が北元喜朗理事長から、親である北元喜雄氏に支払われたのです。団交の席で理事達は、功績に見合う金額であると発言しましたが、3億円という金額は、本学の一般補助としての私学助成金に相当し、社会常識的にもバランスを失し他の大学でも例をみない額とのことです。それよりも、平成7年5月に理事を退任し退職金を受けた北元喜雄氏が、2カ月後の7月に再就任し現在も理事でいることは、きわめて不自然です。

 しかし、なぜこのような事が理事会で認められたのでしょうか。冒頭にも述べましたように、「役員功労年金贈呈規程」が同じ日の理事会に同時に出されたのです。しかも、この年金制度も他に類を見ない特殊なものです。

 「久野栄進氏」は、3月末まで学長として頑張っていれば6年になり、この終身年金を受けられることになります。現在の理事達全員はもちろん監事の金友昭一氏もこの規程での功労者の対象になる可能性を持ちます。

 そのような事情のもとでは、現職の役員や学長が年金支給に期待感を抱くのも致し方ないことなのかも知れません。しかも、該当者と年金額の決定は理事長が行うことになっています。したがって、決定権限を持つ理事長の意に沿わずに教職員の意向を汲み上げることを、学長やほかの理事達に教職員が期待するのは無理なのかもしれません。さらに、このような利益誘導の規程がある限りは、大学人としての責任と誇りを捨てても、それを期待して役職に付くことを望む教員や職員が出てくるのも自然なのかも知れません。しかし、それでいいのでしょうか.学園は荒廃するのではないでしようか。

 本学では、規程はこのように理事会で由由に変えたり、制定できるのです。就業規則や学長任用規程もしかりです。理事会メンバーは規程さえ作れば、それを振りかざして何事でも「合法的」に処理できると考えているようです。

これらの事実は、いわゆる「お手盛り」の分かりやすい典型的な例として、法学部の学生さんの教材として利用できるのではないでしょうか。