北陸大学教職員組合ニュース 号外(1997.9.8発行) 号 外

                                   

 

 

8月29日発行

 

With Plus」の論点は何か

 

法人は社会常識に則り、誠意ある態度を

 

 法人は、8月29日、「With Plus」を発行して、教職員組合が北元喜朗理事長等に提出した一連の質問書や要求書に関して、声明を出しました。

 まず、この「With Plus」を冷静に読んで、本学280余名の教職員のうち、何人が、法人の主張する通りだと思ったでしょうか。ほとんどいないのではないでしょうか。「With Plus」は、理事長周辺のごく一部の人たちの言説を声高に喧伝し、全く中身のない文書であり、反論に価するものではありませんが、私たちの組合に投げられたボールであるとしたら、投げ返して差し上げるのが、親切であると思いますので、若干の論評をします。

 この「With Plus」の前半は、組合が提出した要求書や質問書を、「本来の労働運動から逸脱したものがほとんど」、「組合が取り扱う事項ではない」と論難しています。しかし、今や、本学に見られる諸問題の中で、労働問題と切り離して論ぜられるものは一つでもあるでしょうか。要求書や質問書で取り上げたことは、大学経費の支出に関することであり、直接私たちの待遇改善(給与)に響くものであります。あるいは、社会における本学の信用を著しく損ね、本学の存立そのものを脅かす重大事であり、私たちの生活基盤を揺るがすものばかりです。私たちの職場は神聖な教育の場であります。その教育の場、ひいては私たちの労働環境が、法人が引き起こした学生逮捕監禁事件で破壊され、教育が蹂躙されていることを私たちは見過ごすわけにはゆきません。

 同時に、組合が取り上げた諸問題は、4000名学生とその父母、あるいは卒業生に強い衝撃と、深い憂慮と悲しみを与えたものばかりであります。私たちにとって学生は授業料を持ってくるだけの存在ではない。よらしむべし知らしむべからずの存在では決してありません。彼等の真摯にして当然の問いに、私たちは答えなければなりません。学生との日常の会話の中ばかりでなく、父母や卒業生からも数多くの問い合わせが組合に寄せられています。

 一連の疑惑や不祥事について、北元理事長自ら教職員や学生の前に立って説明すべき事柄であるにもかかわらず、それを行わずして、組合の行動や性向を云々する資格はありません。

 私たちの組合は、多数の法学部教員を含む団体で、今更、「労働組合法」を法人から教えて戴く必要はありません。六法に見える文言の断片を取り立てて講じる勇気には敬意を表しますが、内容はこの「With Plus」の中でも、最も観念的で意味をなさない部分です。

 さて、「With Plus」の後半は、当組合を具体的に非難しています。私たちは、北元喜朗理事長の団交への出席を求めてきました。しかし、この2年間、35回にもなる団体交渉に一度も顔を出しません。全教職員の過半数が加入した法的にも認められた教職員組合を、理事長は無視していると言われても反論できないはずです。誠意がないと非難されても仕方がないではありませんか。労働団体の大会に総理大臣が挨拶に訪れる時代です。正常な労使関係を築こうとする意志があるなら、率先して団交に望むべきです。団交でまともに受け答えができず、「・・・(無言)」を繰り返す出席理事らに、理事長はどんな権限を委譲したというのでしょうか。組合ニュースなどで、理事長の感情にさわる字句がなかったとは言い切れません。しかし、4000名の学生、280名の教職員、年間100億円を動かす法人の理事長として、相手が無礼であるの一点張りで、法的にも対等な労使関係をないがしろにされるというのは、いかがなものでしょうか。

 組合ニュースなどで「無為無策」と評されたことを非難していますが、それを組合の誤解であるとして、法人は否定できるでしょうか。無為無策でないなら、まずそのことをはっきりと説明すべきです。その前提無くして一方的に組合を非難する「With Plus」は、この点でも内容がありません。ましてや、「道理に反する」などという論法は、本当の論点を避けるやり方で、反発こそすれ共感はえられません。

 組合が発した要求書や質問書に、「義務なき質問に答えることを要求する」と記されています。人権を侵害した上に、北元喜朗理事長自ら学生を査問したとされる学生の逮捕監禁事件で、その学生に「放学」をちらつかせて、「義務なき質問に答えることを要求」した理事長の行為が思い出されます。しかしながら、組合の要求書や質問書には、理事長や理事らは答える義務があります。説明する義務があると思うから質問しているのです。これを不当として私たちの行為を非難することができるでしょうか。

 ところで、この「With Plus」の本音は、組合が発した要求書や質問書が、「労働運動から逸脱している」と決めつけ、“だから、法人はそのような質問には答えられない”として、回答拒否を正当化するためであることは明白です。では、学生や教職員個人、あるいは学内の任意団体が質問すれば、誠意を持って答えていただけるのでしょうか。それを保証しないかぎり、法人が理由とした「労働運動云々」の主張は根底から崩れます。誰にでも答えてもらえるなら、組合が権利を行使して質問することはないでしょう。

 かって、「フォワード」の実体について、ある評議員が質問したところ、理事らは回答をはぐらかしてその場をしのぎ、直ちに評議員会規程を変更し、評議員個人では質問できないような制度にしたと聞いています。かって、学生監禁事件が起こった当時、全学教授会で外国語学部教員が質問したとき、久野学長は、学生を守るべき立場にありながら、「私もよく知らない」として、まじめに取り上げなかったと聞いています。

再度、私たちは反論します。文部省の異例の行政指導を受けているという事態の中で、社会常識を持つ理事会なら、教職員や学生父母に対し、何を説明し、何を釈明し、誰が責任を取らねばならないかは分かっているはずです。まずそれをし、自らけじめをつけた上で、組合の言動の是非を論じるべきです。それが、ものごとのルールです。でなかったら、今回もまた、法人は公金を使って「With Plus」を発行し、単に組合攻撃に利用したという誹りを免れません。

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