北陸大学教職員組合ニュース第103号(1997.12.12発行)

 

協働関係確立は実現するのか

 

学長任用規定(案)策定に重大な関心

 

 平成9年度定期総会で誕生した新執行部は、本学における諸問題の原因が現法人理事会の不正常な大学運営にあるとの組合設立当初からの認識を再確認し、あらためて学内民主化に取り組むことを運動方針に掲げています。これまでも組合は、学長選任裁判をはじめ、有志の会などの学内民主化運動を全面的に支援してきましたが、本学法人が9月に文部省から再度の厳しい指導を受け、教学との協働関係の確立に「具体案骨子」を提示されて以来、学長選任にかかわる全学教授会での審議を見守ってまいりました。

 文部省の指導は、「教学意思が反映された学長を選ぶこと」であり、そのために「法人が教学側の土俵に下りること」であったのですが、その精神が全学教授会に提出される理事会側の規程案や佐々木学長の審議の進め方に十分反映されているでしょうか。

 

10 月 2 日 佐々木学長 「第10回全学教授会開催(10月8日)」通知を出す。

10 月 8 日 佐々木学長 再度、「第10回全学教授会開催(10月9日)」通知を出す。

    通知書で、文部省の具体的な指導に基づく「具体案骨子」を発表する。

10 月13 日 「With」にて、理事長声明を発表。

10 月15 日〜17 日

中川専務理事が3学部と事務局で、「文部省の行政指導内容とその対応」を説明する。

10 月29 日 全学教授会 開催。学長から、学長任用規程の「理事会案」が示される。

11 月 5 日 全学教授会 開催。

11 月12 日 全学教授会 開催。林外国語学部委員から、「学長選考規程(案)」が提出される。

11 月20 日 全学教授会 開催。学長から、学長任用規程の「学長試案」が示される。

11 月26 日 全学教授会 開催。学部選出メンバーから、先の「学長試案」に対して、「修正案」が提出される。

12 月 3 日 全学教授会 開催。「修正案」を審議する。

12 月10 日 全学教授会 開催。佐々木学長は常任理事会で承認済みという「改正案」(常任理事会案)を提出する。

 

 このような経過の中で、12月10日に提出された「常任理事会案」について、若干の論評を加えたいと思います。

 

 

組合論評

北元理事長に協働関係確立の意思はあるのか?

 

 12月10日(水)、常任理事会の手による学長任用規程の改正案(以下、「常任理事会案」という)が佐々木学長から全学教授会に提出されました。

 常任理事会案の要旨は、「選考会議」が学長の候補者を選出し、その候補者の中から教員(助手を除く)が選挙で学長を選ぶ、というものです。一見すれば、「いろいろと問題は多いが選挙制を認めるとは理事会も変ったものだ」という印象をお持ちになる方もいらっしゃるかも知れません。が、それは全くの誤りといわざるをえません。この案で学長選考が行われると、教員の意思に真っ向から反する結果になる可能性がきわめて大きいのです。常任理事会案は、大学審議会が「事前に候補者を数名に絞り」と答申したのを曲解して、「教員の代表者は教員の手で」という選挙本来の意義を否定しようとするものに他なりません。すなわちこの案は、「教員に支持される者は学長にしない」という、旧学長公選規程が廃止されて以来の理事会方針が何一つ変っていないことを示すものなのです。

そのことを確認するため、ここで、この常任理事会案が実現するとこうなりそうだという、もっとも「ありがちな」シミュレーションをしてみましょう。

 まずはじめに、学長候補者を選ぶために、常任理事(8人)と現学部長(3人)、各学部から選挙された教授(3人)で構成される「選考会議」が召集されます(附則3)。学長候補者は、「出席構成員の過半数」で決定されますので(8条2項)、常任理事と任命学部長に囲まれた、わずか3名の学部選出教授の主張は「少数意見」として一蹴されることになりましょう。そして、教員の多数が学長になってもらいたいと思っている人を候補者からはずし、理事長にとって都合の良い人だけを候補者に残すという決定が多数決によって下されることになりそうです。「多数決で決めることは正しいことだと君たちは全学教授会でズッと言ってきたじゃないか」と、過去の横暴を棚にあげて主張する佐々木学長の姿が目に浮かぶようです。

 つぎに選挙となりますが、上記のように候補者を「絞られて」しまった場合、多くの有権者は棄権せざるをえないでしょう。本当に選びたい人がいないからです。結果、選挙は「有権者総数の過半数の投票」という成立要件(16条)を満たさず、不成立におわります。ついで、「相当期間」をおいて再度選挙が行われますが(17条1項)、候補者は同じですので結果は1回目と変らないでしょう。そうなると、選挙はもはや行われず、選考会議が一方的に学長を決めることになります(17条2項)。かくして、教員から全く支持されず、反発さえ受ける人が学長になるという、佐々木学長が任命された今年の4月と何ら変るところのない結末が訪れるのです。「せっかく選挙をやらせてやったのに、君たちが参加しないから、仕方なくこちらで選んだのだ」という主旨の文字が躍る「With」が目に浮かぶようです。

 要するにこの案ならば、「教員から支持されるような人が学長(1号理事)になることだけは絶対に阻止する」という理事会方針を、完璧に守ることができるのです。つまり、この常任理事会案は、教学との協働関係を確立する気などサラサラないことを高らかに宣言したものなのです。北元理事長は、さらなる学内混乱をあえて望んでいるのでしょうか。