学生諸君へ

 

日差しが日ごと温もりを増し、膨らみ始めた木々の芽が春の息吹きを感じさせる頃となりました。学生諸君においては、進級を控えて新たな目標を胸に抱いていることと思います。

さて、このほど、一部の学生が理事会への要求について賛同を求める署名を集め、これを文部大臣、理事長に送るとともに、記者会見により報道各社にも知らせました。本学においては、学生が理事会に直接要求する行為は、制度として認められているわけではなく、つまりルールに則った行為ではないのです。(注:他の箇所でも触れていますが、制度として認められている訳ではありませんが、認められていない訳でもありません、つまり、制度としては、認めるとも認めないとも定めてないのです。それを、「理事会に直接要求してはいけない」というようなルールがいかにも存在し、それに反するかのように言うことは、読者を意図的に誤解させようとするものであり、ごまかしだと言えます。)こうした一方的な要求の仕方は、一般社会においてはその例がないわけではありません。しかし、なんでもかんでも多数であることを拠り所に、正式な手続きを経ることなく自らの主張を通そうとするやり方が横行すれば、世の中の秩序はどうなるでしようか。やや飛躍した例えになるかもしれませんが、一部の国民・県民が首相・県知事が気にくわないからといっていきなり辞任要求の署名を持って行ったとしたら、第三者はこの行為をどう見るでしょうか。筋目を無視した唐突な行為と見るのが、普通の感覚です。(注:首相や知事については、4年に1回の選挙があります。また知事にはリコールの制度もあります。要するにいずれの場合も民主的なコントロールの制度が保障されています。こういう保障の全くない理事長と同一にするのは間違いです。理事長に対する民主的コントロールの道が閉ざされているからこそ、こういう方法をとらざるを得ないのです。選管の委員長までしている学長が、こんな程度のことも分らないのでしょうか?)

今回の一部の学生の行為については、事前に要求に関する話し合いの申し入れもなく、いきなり理事長のみならず文部大臣にまで署名を送付し、ほぼ時を同じくして記者会見に及ぶというのはいかにも唐突であり、また学内の事をなぜ敢えて広く世間に知らせようとしたのかという疑問をぬぐいさることができません。(注:「学内の事」という発想自体が間違いです。北陸大学はいったいいくらの補助金を受けているのでしょうか? 過去20年間で数十億円に達するはずです。しかも、その使途に疑義があり、経理の公開を要求されているのです。これは国民全体に関わる問題でしょう。)この一連の行為の中での主張には、相手方の意見、考えを聞かずに自らの見解のみに基づき一方的に批判する内容が含まれています。自分の一方的な思いによる批判を広く世間に知らせた場合、相手方がどのような影響を受けるか考えてみてください。もし自分の知らない間に一方的な自分への批判を世間に流されていたとしたら、どう思うでしょうか。人間としての良心に基づき考えれば、こうしたやり方についての是非は判断できると思います。(注:これは、おそらく学生監禁事件等、某雑誌に掲載された記事に基づいた私たちの表現を批判しているものと思われます。しかし、その雑誌が発刊された当時、その事に対して何人かの学生が理事長室に質問に行きましたが、会わせてさえもらえなかったそうです。また、組合による公開質問状に対しては、「全て事実無根である。」と回答して、一切の説明を拒んだではありませんか。その上、当該雑誌社への告訴さえできなかったではありませんか。挙げ句の果ては、雑誌社の次号の記事を買収したなどという噂さえ聞いています。)

施設については、無論、改善の余地がないわけではなく、本学としても、教職員等を通じて伝わってくる学生の声を考慮に入れながら充実に努めています。ただし、限られた収入に基づく将来的な整備構想と安定した財政計画に沿って順次改善しなければならないため、もどかしさを感じる学生諸君もいるかもしれません。しかし、学生諸君の要望をできるだけ大学運営に反映していこうとする姿勢と努力があることは理解してほしいと思います。(注:施設の充実は、私達が要求していることの中では、ほんの些末的なことです。私達が要求していることの中の最も大事な部分は、経理公開、3億円退職金返還、授業料減額、先生方の意向を反映した大学運営等です。このことについて、何故、ここで言及しないのですか?)

今回、署名した学生諸君の中には、自らの明確な意思で署名した人もいれば、誘われるままになんとなく署名した人もいると思います。(注:どうして勝手にそんなことが言えるのでしょうか?)しかし、こうしたルールに基づかない一方的な要求、自己主張の方法が正しいのか、今一度冷静に考えてみてください。目や耳に入る情報が真実かどうかも確かめずに、(注:真実でないのなら、疑われている当人が堂々と弁明すべきでしょう。弁明しないのは、できないからでしょう。事実だからでしょう。)群集心理で軽はずみな行動をとることは避けてほしいと思います。学生諸君は入学時に、本学の教育理念を尊重し、本学の方針と諸規則を守り、勉学の目的と使命を達成する旨の誓約書をしたためています。(注:学長が私たち学生を脅迫するのですか?)学生として今、最も打ち込むべき事は何かを改めて認識し、分別のある行動をとるよう切に願う次第です。

 

平成十年三月二十日

北陸大学学長 佐々木吉男