(北陸中日新聞 平成9年1月19日)

 

北陸大学内に盗聴器

理事会と対立 組合使用の教室で

亜細亜大学前学長の衛藤瀋吉氏を次期学長に選任した決議をめぐり教授らと理事会が対立している北陸大学(金沢市)で、同大学教職員組合の執行委員会に使われる教室内に延長コードを模した盗聴装置が仕掛けられたことが十八日までに分った。同組合は大学側が仕掛けたとみて「組合に対する犯罪的行為」と機関紙で抗議。大学側は「事実無根で、大変迷惑」と反論している。

組合役員の話では、盗聴装置は昨年十二月上旬、薬学部の大学院セミナー室で組合役員が執行委員会を開いた際に見つけた。

市販の延長コードそっくりで、ビデオデッキなどに接続されていたが、メーカー名や製造番号などの表示が削り取られたような跡があり、電源に差し込んだ状態にすると室内の音声が無線受信機で傍受できることが分った。

組合で今月十日、弁護士の立ち会いで調査したところ、同じ棟の階下の教室や事務棟、薬学部の敷地入り口のバス停付近など広範囲で受信できることが確認されたという。

セミナー室は、大学院学生のゼミなどのほか、一九九五年七月の教職員組合発足以来、月に二、三回は組合の執行委員会に使われていた。執行委員会は使用日時を事前に大学事務局に届け出ていたという。

組合は十六日付の機関紙で「これが北陸大学の体質か」などの見出しで抗議を表明。執行委員長の土屋隆薬学部教授は「以前から執行委員会の内容が漏れているとの指摘があり、状況証拠から大学側が仕掛けたことは明らか。法的措置をとりたい。」と話している。これに対し、中川幸一専務理事は「事実関係を調査しているが、まだ何も確認できていない。(組合ニュースで大学側の仕業と)ほのめかされるのは大変迷惑で、戸惑っている。場合によっては調査委員会を設けて本格的に調べたい」としている。

同大学は、四月からの次期学長に衛藤瀋吉氏を選任した理事会決議は教授会の審議を経ておらず、学校教育法に違反しているとして昨年十二月十七日、教授二十五人が同決議の無効確認などを求める訴えを金沢地裁に起こした。