(平成10年12月16日 朝日新聞朝刊 いしかわ面(いしかわNOW)

双方合意の選挙で新学長  北陸大学



遠い正常化への道のり
学長の選任方法などをめぐって大学理事会と教授グループが対立していた北陸大学(金沢市太陽が丘1丁目)で、双方の合意に基づく新しい任用規程による学長選挙が14日にあり、前薬学部長の河島進教授が学長に選任された。これで、法廷にまで持ち込まれた対立には一応の区切りがついたことになる。しかし、過半数の教員の意向に反した形での選任に対して、一部の教授グループには不満も残っている。15日には現学長の地位不存在などを求めた訴訟も結審した。双方が望んでいるはずの「正常化」への道は、まだ遠そうだ。

消えぬ感情的対立

対立が表面化したのは1996年夏、理事会が教授会の審議を経ずに、元亜細亜大学長の衛藤瀋吉氏を新学長に選任した。これに教授グループが反発。自主選挙で同大法学部教授を「学長」に選ぶとともに、同年12月、大学を相手に、衛藤氏を選任した理事会決議の無効を求めて、金沢地裁に提訴した。
教授側は「学校教育法には『大学には、重要事項を審議するため、教授会をおかなければならない』とある。学長の選任はこの重要事項にあたり、教授会抜きの選任は違法だ」と主張。
理事会側は「同法は教授会の権限を定めたものではなく、学校法人の業務は理事によって決められるもの」などと主張していた。
教授側は、97年2月に理事会が衛藤氏の就任を撤回した後も、訴えを変更し、代わりに就任した佐々木吉男・現学長がその地位にないことの確認を求めていた。理事側はこの訴えの変更に同意していない。

しかし、文部省から再三の指導を受けたり、関係者からも「争いごとに疲れた」と声があがったりし始めたことから、新しい任用規程を求める声が強まり、今年に入って協議が続けられていた。
新方式は、@ 各学部の教授会が投票で選ぶ教授6人、理事会から3人、各学部長3人、学長の、計13人でなる推薦会議の投票で3票以上獲得した人を候補とする。A 専任講師以上の131人が投票。 B 有効投票の20%以上を獲得した候補の中から理事会内で投票、の手順で決める。
この規程により推薦会議で挙がったのは、理事会が推す前薬学部長の河島進教授と、法学部長の初谷良彦教授の2人。今月12日にあった投票の結果は河島氏41票対初谷氏81票。とちらも20%以上を獲得し、決定は理事会にゆだねられた。
結局、14日に開かれた理事会で新学長に選ばれたのは河島氏で教員の6割強が推した初谷氏にはならなかった。

理事会側は「全国440ある私立大の半数は任命制。国立大と違い、私立大は創立者の理念をきちんと継承していくことが求められるはず。ころころと座標軸が変わるようでは私学のあり方が問われる」と話す。
実は、81票を獲得した初谷氏は、理事会の開かれる14日朝に突然、辞退届を提出していた。「理事会も投票結果を考慮するはず」としていた教授グループも、突然の事態に当惑している。関係者の話によると、同氏は辞退の理由について「理事会の意向に反することでさらに混乱を深めると判断した」と話しているという。理事会側は「(任用規程については)納得の差はあると思うが、一応合意されたルールで出た結果だから守ってもらいたい」と話す。
一方、15日に結審を迎えた訴訟では、新学長の選任を受けて、教授側が佐々木現学長の地位不存在確認を求める訴えを一部取り下げる申し出をした。が、大学側はこれに同意せず、あくまで争い、裁判所の判断を仰ぐ構えだ。
選任方式をめぐって双方が同意したとはいえ、最終的には理事会に決定権が残る点に、一部グループには不満が残る。
全国規模で報じられた「2人学長」騒ぎから2年あまり。一応の「決着」を見たものの、感情的な対立まで呼んだ騒動は、なお学内にしこりを残しそうだ。


北陸大訴訟が結審 判決、来年2月12日

北陸大学の教授らが教授会抜きの学長選任は違法だとして、理事会が選んだ佐々木吉男学長や学部長らの地位不存在の確認を求めている訴訟の口頭弁論が15日、金沢地裁(渡辺修明裁判長)であり、原告、被告双方がこれまでの主張を整理した準備書面を提出して結審した。
弁論の冒頭、教授側は、河島新学長選任を受けて、佐々木現学長の地位不存在確認を求める訴えを取り下げる申し立てをした。しかし、「現在はまだ佐々木氏が学長だ」として理事会側はこれに同意しなかった。判決は来年2月12日に言い渡される。

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