(平成11年3月6日 北陸中日新聞朝刊 第1社会面)

教授らを゛門前払い 北陸大訴訟で金沢地裁「原告適格がない」


北陸大学(金沢市)が教授会を通さずに学長らを選任したのは違法だとして、教授21人が学校法人北陸大学に、学長や学部長の地位不存在確認と慰謝料約1千万円の支払いを求めた訴訟の判決が5日、金沢地裁であった。渡辺修明裁判長は「学校教育法や大学の規程上、教授は学長らを任免するなどの利害関係がないから、原告適格がない」とし、学長らに関する請求を却下、慰謝料請求も棄却した。
判決は、「教授会には「重要事項」の審議権があると認めている学校教育法に反する」という原告側の主張について、「国公立大の場合、教育公務員特別法が「重要事項」を定めているが、私大では、大学の自主性にゆだねされている」と判断。教授会の関与が可能だった選挙制度を大学側が廃止したことは「理事会と理事長の裁量に属する」とし、外国語、薬両学部長と薬学部教授の地位不存在確認請求も退けた。教授会が助教授に推薦した人物が薬学部教授に採用されたことによる慰謝料も「教授会の審議事項に教授採用は含まれない」として認めなかった。
訴えによると、北陸大は1996年8月の理事会で、教授会の審議を経ずに元亜細亜大学長の衛藤瀋吉氏の学長選任を決議。同様に3人の学部長の選任と薬学部教授の採用も決めた。教授側は同決議の無効を主張して96年12月に提訴したが、結局衛藤氏が学長に就任しなかったため、請求を佐々木吉男前学長らの地位不存在確認に変更していた。

学内問題は学内で  学校法人北陸大学の中川幸一専務理事の話

原告は訴訟を起こす資格がないという主張が全面的に認められた。学内問題は学内で解決されることを願い、理事会・教学で力を合わせ、地域から高く評価される大学づくりにまい進する。

「判決は形式的」原告の教授ら

「法解釈でこのような結果になったが、現実にはこちらの主張に沿って(学内の)問題は解決できている」。
判決言い渡し後、金沢法曹会館で会見した原告の土屋隆・名誉教授らは、請求を゛門前払いした判決を「形式的な司法判断で非常に残念」と批判しながらも、訴訟をきっかけに選考制度が改善されるなど「学内改革」が進んでいるとして、さらに改革を進める姿勢を示した。
同席した弁護士は、判決が大学のあり方にまで及ばなかったことに「深みのない判決。実体に入らずね大変不満だ」と表明。土屋名誉教授は「控訴は弁護士と相談して決めたい」と話した。
一方で、昨年12月には学長、学部長の選考規程が改定され、教授の投票を経て理事会が学長を決定する方式に変わるなどしたことについて、教授らからは「提訴後、理事会理事会だけの判断による教職員採用、昇進人事が進められるようになった」と訴訟の意義を評価する声も出た。
しかし、昨年12月の学長選では「候補者が理事長の圧力で辞退した」とし、文部省に事実関係の調査を求める上申書を提出したことを明らかにした。
林敬・外国語学部教授は「規程は変わっても、運営で理解しがたいところがある。北陸大をしっかりした大学にしたい」と決意を述べた。


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