(平成9年4月1日 北陸中日新聞)

 

北陸大、新学長に佐々木教授

教授陣また反発

選任反対を決議

 

学長選出の方法をめぐり北陸大(金沢市)の教授らと大学側が対立している問題で、大学側は31日、次期学長に現法学部長の佐々木吉男氏(69)を選任した。これに対し教授らは、「教員の意思をまったく反映していない」と反発。各学部ごとに次期学長の選任に反対する決議を採択するとともに、大学側に「全教員による信任東京あるいは選出のやり直し」を要求する抗議文を提出した。

新学長は、同大学長任用規定に基づき、理事会が29日に提出。教員らには31日、大学の機関紙などで通知された。

新学長選任について、中川幸一専務理事は「佐々木教授は北陸大の教育方針などをよく理解し、指導力もある方。今後も私大としての独自性を大切にしながら、教授らとの相互理解を深める努力をしたい」としている。

これに対し教授らは同日午後、学部後とに緊急の教員会を開き、全教員182人中110人の賛同を得て、次期学長の選任に反対する決議を採択。各学部の決議の内容と投票結果を理事会に提出した。

教授らの抗議について、同専務理事は「これまでの経過もあるので、抗議もあるかとは思っていた。まだ(抗議文の)内容をしっかりと見ていないし、今はこのことについて特に意見を言うのは控えたい」と話している。

同大理事会は昨年8月、亜細亜大学前学長の衛藤瀋吉氏を学長に選出。これに対し、公選制を求める教授らが、学長選任決議の無効などを求める訴えを金地裁に起こした。大学側が今年2月になって衛藤氏の選任を撤回したため、和解交渉が行われたが、双方の主張はかみ合わず、3月28日に決裂した。

教授側は今後の訴訟の進行について、請求内容を今回の選任決議の無効確認に変更するか、新たに訴えを提起するかなど「慎重に検討したい」としている。

佐々木教授は京都府出身。大阪大学大学院を修了後、島根大講師、金沢大助教授、同教授などを経て、平成5年4月から北陸大教授、昨年4月から法学部長。石川県選挙管理委員長を務める。専門は民事訴訟法。学長の任期は平成13年3月末までの4年間。

大学側は31日、任期満了に伴う薬学部と外国語学部の次期学部長と、佐々木教授の後任の法学部長についても、薬学部長に山本郁男教授(60)、外国語学部長に高田維有教授(60)、法学部長に松本幹雄教授(70)をそれぞれ選任した、と発表した。

 

違法行為は厳正対処

北元理事長が声明文

 

北陸大は31日、新学長らの選任を伝える機関紙に「今後、一部教職員による違法な行為が繰り返される場合、本学の諸規程に基づき厳正に対処していく」などと教授らに強い姿勢を示す北元喜朗理事長名の「声明文」を掲載、学内に張り出した。

声明文は、裁判で争点となっている学長選任方法に触れ「本学には、これまで営々と築いてきた学長選任規定をはじめとする諸規程があり、そのルールに従って問題解決を図ることこそが私学の本質」と同規定の正当性を主張している。

一方、教職員の意思が反映できる学長選任規定を教授らが求めていることに対し、教職員の意見を聴く場を設けると約束。選挙による学長、学部長選出については「本学の新たなる伝統を創造していくことについて何らちゅうちょするものでない」と将来的には検討対象となり得ることを示唆している。

同日記者会見したある教授は「教員の声を反映させるつもりがあると言いながら、前回と同様、理事会の独断で学長らを決めてしまった。少しは教員の声に耳を傾けてほしい」と憤った。