(平成9年3月21日号 週刊朝日 THAT‘S POE STREET)

 

北陸大のお粗末 知名度だけはアップ 大山鳴動の学長選び

「理事長に居間のカ−ペットに頭をつけ、『お願いです。学長になってください』とまで言うから決めたんです。それなのに悲しいな」亜細亜大学の前学長で、国際政治学者の衛藤瀋吉氏(73)は、こう嘆く。金沢市の私立北陸大学で、北元喜朗理事長のワンマン運営に教授たちが反発し、理事会が決めた「衛藤学長」に対抗するため、独自の学長選挙を行う異常事態が起きていた(本誌2月28日号グラビア既報)。

その後、教授会と理事会の対立は、さらに激化するかに見えたが、2月27日に理事会側が突如、「衛藤学長」案を撤回した。屋根に上げられた後、はしごを外された形の衛藤氏は、こう憤る。 「北元理事長は『 白紙に戻してくれ』と言うだけで、事情説明もおわびもなし。『 話し合おう』ともちかけても、5分もしないうちに部下を残して帰ってしまった」

衛藤氏が怒るのも無理はない。「学長就任決定」後、金沢行きを考慮して多くの仕事を断った。しかも、「僕は最初から、『教授会の協力がなければ何もできない』と言い続けてきた。教授たちと直接話をさせてくれとまで訴えた。でも、理事長は『 大丈夫 』『 ちゃんとやる』の一点張り。その結果がこれですから」(衛藤氏)関係者の間には、「教授会が補助金にまつわる金銭スキャンダルを暴こうとしたため、理事長があわてて懐柔策に出た」という声もあるが、教授の一人は、こう言うのだ。「いずれにせよ、何か計算があったはず。われわれは、あくまで理事会の独善的運営を問題にしていただけで、衛藤さんという人物に反対していたわけではない」

そもそも、北元理事長が、衛藤氏に白羽の矢を立てたのは、「北陸大学の名前を全国区にしたい」という悲願があったからといわれる。「その意味では、今回の事件で、大学の名が全国に知れ渡った。私もいちおう役目を果たしたということです」と衛藤氏は苦笑した。